今月の症例
皆さんに伝えたいケーススタディ
運動器疾患 左足関節前方の背屈制限と痛み
17歳 女性
バスケットボール部。特に活動中に受傷した記憶はないが、しゃがみ込みや左下肢を軸にして方向を変える時に疼痛があり、思うようにプレーを継続することが困難になり整形外科を受診。X線上問題はなかったが、前距腓靭帯損傷と診断。2週間の安静となった。日に日に痛みは軽減して、1週間後には日常生活において痛みを感じることがなくなったので、バスケットボールの活動を再開、するとまた背屈制限と痛みが強くなる。試合が近いのでなんとかならないかと当院を受診。
問診:以前から左足関節捻挫を繰り返している。
以前からお腹の調子が悪いと言っている。(食べる量が多く、早い)
舌:脾胃の熱
脈:緊、やや数
腹:CV12 熱、張り、圧痛
前方引き出しテスト(ー)
内反ストレステスト(ー)
下腿後面の筋群の強い影響は特になし
1回目:CV12(Contact needle)、緊、やや数が少し落ち着いたので、ST41 (Contact needle)&お灸(紫雲膏使用で11壮)。舌、脈、腹の所見に変化がみられたので、疼痛誘発動作を行い主訴の確認。背屈制限、痛みともに90%消失したので、食事指導とST41の説明、運動指導を行い1回目の施術終了。
2回目:2日後来院。1回目の次の日からバスケットボール活動再開。激しいplayはまだ少し違和感が残ったが、次の日は違和感もなくなり、普通にplay出来た。ただ、痛み、制限はないが、左膝(ST line)に違和感がある。
1回目の所見は消失。左膝(ST line)の違和感に対して、ST42(Contact needle)を行い2回目の施術終了。
3日後、膝の違和感もなく、大会にも出場し、以前のplay以上に動けた。また、悩まされていたお腹の調子も良いと喜んで電話連絡が来たので今回の施術はこれで終了。その後、1年経過するが今のところ足関節捻挫も出ていない。
Tsuyoshi’s eye
西洋医学的診断
僕の治療法では必ず次の3つのステップで診断を進めていく。
ステップ1 どう動かすと痛むのか。
左足関節の背屈時。特に荷重時に強く制限と痛みが出る。(圧縮されると痛みが出る)
ステップ2 どこが痛むのか。
左足関節前方。(前距腓靭帯損傷、結合組織のインピンジメントの疑い)
ステップ3 なぜ痛むのか。
左足関節の背屈制限が強制されているから。(前距腓靭帯損傷、結合組織のインピンジメントの検査を行い、結合組織のインピンジメントと診断)
東洋医学的診断
脾胃の熱が強く影響していると診断。
今回の症例は、食べ過ぎ、咀嚼不足により、足関節前方及び膝関節の結合組織に影響を与え、発症した痛みと考える。
今回なぜこの症例を選んだかというと、脾胃を痛めることがスポーツのパフォーマンスにどれだけ影響を与えているのかということを共有したかったからです。胃の気の大切さを改めて教えてくれた症例でした。
患者様と師匠に感謝。
参考
ST 41:脾胃の熱を取ってくれます。(重症)
ST 42:脾胃の熱を取ってくれます。(軽症)、膝全面(ST line)の症状
Point
ST41:足関節を背屈可能なところまで軽く背屈させ触診を行い、硬いところ、動きが悪いところを取る。Contact needleの場合、硬いところに動きをつけるように、流注に沿って流す。お灸の場合、7~11壮を目安に1セットから3セットを紫雲膏を使用して行う。